09/03/2025
トランプ大統領は8月12日、国防総省(Department of Defense)の名称を、第二次世界大戦時代以前に使用されていた「戦争省(Department of War)」に戻す案を示した。大統領執務室で開かれた会合で、「戦争省という名称が響きが良い」「元に戻すべきだと思う」と発言し、当時の勝利の歴史を喚起させる名称であると強調した。ピート・ヘグゼス国防長官も「近く正式な変更が行われる」と述べた。
「戦争省」は1789年、初代大統領ジョージ・ワシントンにより設立され、初代長官は独立戦争指導者ヘンリー・ノックスが務めた。その後、南北戦争や第一次・第二次世界大戦まで使用され続けたが、1947年にトルーマン大統領が批准した国家安全保障法により、陸海空軍が統合された形で国家軍事機構となり、1949年には「国防総省」へと改称された。軍事史家リチャード・H・コーン氏は今回の改称案について、「冷戦期の国防戦略や核抑止を重視する姿勢を象徴し、攻撃よりも抑止を重んじる時代の変遷を反映している」と解説する。
トランプ氏は6月にSNS「Truth Social」で「防衛より戦争のほうが響きが強い」との投稿を行い、7月にも改称の必要性を訴えてきた。一定の支持もあり、ヘグゼス長官が3月に実施したX(旧Twitter)の投票では「戦争省」支持が54・3%を占めた。
名称変更には法的ハードルが存在する。コロンビア大学のジャマール・グリーン教授は、「国防総省という名称は議会法で定められており、大統領令で変更する権限はない」と明言している。トランプ氏が以前、メキシコ湾を「アメリカ湾」に改称する大統領令を出した例もあるが、今回のような省庁名称の変更は同列に扱えないとの見方が強い。しかし、議会内にも一定の支持があると見られ、共和党のグレッグ・ストゥービー下院議員(フロリダ州選出)は、国防総省の名称変更を盛り込んだ来年度の国防権限法修正案を既に提出している。