
23/12/2019
豊かな自然と人間の営みが織りなすうつくしさ。
このうつくしさを守るのは、平和のふた文字。
たったふた文字だけれど、平和を築きつないでいくことは大変です。心と目を開いて、となりの人と手をつなぐ……
2019年が終わりを告げようとするいま、そのことの大切さを心の底から思います。
12月4日、アフガニスタンのジャララバードで、同国で長年、医療支援やかんがい事業などを行ってきた医師の中村哲さんが何者かに銃撃され亡くなりました。この悼ましいニュースに涙された方も少なくないと思います。心から中村哲さんのご冥福をお祈り申し上げます。
アフガニスタンは、日本から西へ約6,300キロ、緯度は日本とほぼ同じです。
万年雪の山やま、大草原、砂漠と、地勢は豊かな表情を持ち、季節ごとに花ばなが咲き乱れ、果物がたわわに実る。そして、人びとは厳しさと慈しみに満ちた自然のなかで生きている。
一度でもこの地を訪れたことのある人は「ほんとうに美しい国だ」と口をそろえます。日本画家で絵本作家の小林豊さんもそのひとり。
小林豊さんの絵本『せかいいちうつくしいぼくの村』は、アフガニスタンのパグマンという村を舞台に描かれた物語です。
戦争が続く国で暮らすヤモ少年が、兄さんのかわりにはじめて父さんの手伝いでまちにさくらんぼを売りにいきます。ヤモ少年へそそがれるまちの人びとの大らかでやさしいまなざしと、にぎやかで活気あふれるまちのようすが、読み手の心をあたたかくし、においたつような村の美しさが目の前に大きく広がります。
しかし──。
絵本をしめくくるのは、「この としの ふゆ、村は せんそうで はかいされ、いまは もう ありません」とならぶ文字。
1971年、小林さんはトルコのイスタンブールからインドへ向かう途中、はじめてアフガニスタンを訪れました。立ち寄るだけのつもりだったそうですが、この地の美しさに打ちのめされ、人間のよさに心をうばわれてしまったそうです。
心を寄せ、友人の暮らす国が戦争で破壊される……その悲しみは涙の数ではかることはできないでしょう。
20世紀からの歴史で見ても、世界の大国の動きに翻弄され、紛争が途切れることなく続くアフガニスタン。
なぜ戦争はおこるのか、そして、なぜ終わらないのか──。その問いに答えを出すことはかんたんではありません。
でも、わたしたちひとりひとりが「うつくしい村」とそこにあるあたたかな人間の心を読み継ぎ、語ることは、かならず1本の轍となります。その轍は、かならず希望の道すじ、平和への道すじとなるはずです。
◉『せかいいちうつくしいぼくの村』について詳しくはこちらをご覧ください。
ふれて、声に出して読んでいただければ、パグマンの風景とともにあるヤモの声が聴こえてきます。
https://www.poplar.co.jp/book/search/result/archive/3440040.html
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『せかいいちうつくしいぼくの村』は、ヤモの暮らすパグマンの村を舞台に「ぼくの村」三部作として出版されています。
◉『ぼくの村にサーカスがきた』
長く戦争が続くヤモの国。ヤモの兄さんも友だちのミラドーの父さんも戦場に出かけ帰ってきません。でも、秋のある日、ヤモたちの暮らす村にサーカスがやってきたのです!
詳しくはこちらをご覧ください。
https://www.poplar.co.jp/book/search/result/archive/3440045.html
◉『せかいいちうつくしい村へかえる』
サーカスの笛吹きとなり世界中を旅するようになったミラドー。思い出すのは、なつかしいパグマンの村、そして友だちのヤモのこと。でも、パグマンの村は……
詳しくはこちらをご覧ください。
https://www.poplar.co.jp/book/search/result/archive/3440055.html