
16/03/2025
パット・メセニー(Pat Metheny)は、アメリカを代表するジャズギタリストであり、20回のグラミー賞受賞やNEAジャズマスター賞を受賞するなど、その功績はジャズ界において際立っています。一方、リンダ・マンザー(Linda Manzer)は、カナダを拠点とする著名なギター製作家(ルシアー)で、メセニーとの長年にわたるコラボレーションで知られています。2025年の日本公演では、メセニーがマンザーによる特注ギターを用いた演奏を披露する予定で、両者の関係性が注目されます。
パット・メセニーについて
1954年ミズーリ州生まれのメセニーは、12歳からギターを始め、1970年代からジャズシーンで活躍。パット・メセニー・グループを率いる一方、ソロや多彩なコラボレーションで知られ、エレクトリックギター、アコースティックギター、ギターシンセサイザー、そして特注のバリトンギターや42弦の「ピカソ・ギター」など、革新的な楽器を用いた表現を追求してきました。2023年の『Dream Box』や2024年の『MoonDial』といった近作では、ソロギターの可能性をさらに深めています。
リンダ・マンザーについて
リンダ・マンザーは、1970年代からギター製作を始め、ジャズやフォークの分野で名を馳せるルシアーです。彼女の工房「マンザー・ギターズ」は、緻密な手工芸と革新的なデザインで評価されています。メセニーとの出会いは1980年代に遡り、彼の音楽的ビジョンを実現するためのカスタムギターを製作。特に有名なのは、42弦の「ピカソ・ギター」で、1984年にメセニーのために作られ、彼のアルバム『The Way Up』(2005年)などで使用されました。また、2024年のアルバム『MoonDial』で使用されたナイロン弦バリトンギターもマンザーの手によるもので、メセニーの深みのある音色を引き出しています。
メセニーとマンザーの関係は単なる製作者と演奏者の枠を超え、互いのクリエイティビティを刺激し合うパートナーシップです。マンザーは自著『森の中からジャズが聞こえる―パット・メセニーのギターを作る』(原題:A Luthier’s Journey with Pat Metheny)で、メセニーとの製作過程や彼の音楽への情熱を詳述しており、その中で彼の「音に対する執念」を称賛しています。
2025年日本公演について
2025年5月27日(火)と28日(水)に東京・すみだトリフォニーホールで開催される「Blue Note Tokyo Presents PAT METHENY Dream Box / MoonDial Tour」は、メセニーのソロ公演です。この公演では、『Dream Box』と『MoonDial』の楽曲を中心に演奏され、特にマンザー製のナイロン弦バリトンギターがフィーチャーされます。このギターは、低音域の豊かな響きとナイロン弦特有の柔らかな音色を活かし、メセニーの静謐で内省的なソロスタイルを際立たせるでしょう。
公演は、前回の2024年1月~2月のトリオ&ソロツアーから約1年半ぶりの来日となり、彼の最新の音楽的探求を日本のファンに届ける貴重な機会です。会場であるすみだトリフォニーホールは優れた音響で知られ、メセニーの繊細なタッチとバリトンギターの深みのあるトーンを堪能するのに最適な場所です。チケットはSS席14,800円からB席11,800円(税込)で、Blue Note Tokyo主催によるプレミアムな体験が期待されます。
意義と期待
メセニーとマンザーのコラボレーションは、楽器製作と演奏の境界を超えた芸術的対話の結晶です。2025年の公演では、マンザーのギターがメセニーの音楽に新たな次元をもたらし、特にバリトンギターによるソロ演奏は、彼のキャリアの中でもユニークな章として記憶されるでしょう。ジャズファンはもちろん、音楽と工芸の融合に興味のある人にとっても、この公演は見逃せないイベントです。
リンダ・マンザー著「森の中からジャズが聞こえる―パット・メセニーのギターを作る」より
パット・メセニーのギターを作る!10時間以上に及ぶ、リンダ・マンザー女史とのトロントでの直接インタビュー。カナダの森とともに生きるギター制作者が、ギター制作に限らず、自分の内面や生きる姿勢、自然との関係....