
10/03/2025
【えほん展ご報告】
3月7日(金)~3月9日(日)
山梨県山梨市
山梨市民会館
今回は、山梨市に行ってまいりました。2019年以来6年ぶりです。そして山梨県では、昨年は開催しておりません。ここ10年ほどなかなかお客様が集まってくださらないので、どうしても足が遠のいてしまいます。しかしこのままでは山梨県で開催しなくなってしまうので、少し勇気をもっての開催でした。
山梨市は小さな町ですが、お隣の笛吹市や甲州市も合わせたら、それなりの人口になります。興味のある方なら足を運んでくださる距離です。三市と周辺の町村の、すべての小学校、幼稚園、保育園、こども園に、お子さんたち人数分のチラシを送らせていただいて、開催日を待ちました。
・・・残念ながらとても寂しい3日間になってしまいました。最近は、開催期間中にSNSなどによる口コミで、何とかお客様が増えてきて形になってくれるものですが、今回は、ご予約の入った7回のブックトークのうち、ほとんどの時間が5名様以下で、10人を超えることはありませんでした。なんと、3日間で来て下さったお子さんの数は、0歳の赤ちゃんも含めて11人だけです。ここまで少ないのは初めての経験です。企業の活動として、最低限の結果も必要な私たちとしては、辛い3日間になってしまいました。
・・・しかし!、来て下さった子どもたち、そして大人の皆さんの関心はとても高く、ブックトークでは、かなり充実した時間を過ごすことが出来ました。
子どもたちは、普段から本に触れていることが分かる子が多く、かつて、本がもっと売れていた頃のような聞き方をして下さいました。
土曜日の13時からの回、いつもはかなり混みあう時間ですが、今回は、8歳の男の子とお母さんの貸し切りとなってしまいました。少し居心地の悪い緊張感が生まれます。特にこの年代のお子さんは、普段あまり本を読んでいらっしゃらないと、モジモジソワソワしてしまうので、ブックトークを途中でやめることになることも少なくありません。しかしこの男の子は、最初から最後まで、楽しそうに聞いてくれて、ブックトーク後も、お母さんとお2人でたくさんの絵本を見て、かなり長い時間を過ごしてくださいました。
その中で、お母さんと私が、顔を見合わせて笑った瞬間がありました。アルファベットの絵本(実際の街の風景から、アルファベットに見える物や場所を探す絵本)を見ている時のこと、「あっ、A」「ここが、B」・・・とても楽しそうでした。そして「えーっと、これ何だっけ・・・、あっ分かった 、“わら”」
「W」です。現代っ子ですね(w)。
・・・実は私は、アルファベットがサッと出て来ないお子さんに、ほっとすることがあります。最近はかなり小さいお子さんでも、アルファベットがスラスラと、それもきれいな発音で言える子が増えました。しかし、あまりにも訓練的に“勉強”をしているだけのお子さんも少なくなく、「これ何だ」「A」という、問題に対する答えとしてABCは見つけてくれても、絵やお話の面白さにはついて来てくれないのです。しかしこの男の子は、ABCは時々怪しくても、読めない絵本の絵を眺めて想像して、かなり長い時間を過ごしてくれました。大人がリードしてあげなくても、ご自身の意思とペースによってです。お母さんが「どうする?もっと見たい?」と問いかけても、「もう少し見たい。もうちょっと見ていく。」と答えられることが3回、お一人でテーブル上の絵本を次々にめくって、ご予約の時間を少しオーバーするほどゆっくり見てくださいました。その横に、過度に導かず、問題や正解を与えることもなく、「わら」を変に正すことなく笑い飛ばして、優しくそっと立って待っていらっしゃるお母さんの様子も印象的でした。
・・・日曜日の最後の回には、絵本好きの3組の親子さんが揃ってくださいました。それぞれ、9歳、7歳、6歳の女の子です。皆さん普段からそうなのでしょう。ブックトークでは、身を乗り出して聞いてくれました。お母さんお2人とお父さんも本がお好きなようで、楽しそうに聞いてくださっていました。
毎日そのように過ごしていらっしゃるお子さんたちは、すでにたくさんのことを知っていらっしゃいます。それだけ考えるための材料を持っていらっしゃるわけですから、話を聞くこと、初めてのことを探ることも上手です。
いつも私は、「ここは気付いてくれているかな?」と子どもたちを探りながら、気付いていないようであればヒントを差し上げながらブックトークを進めるのですが、この時間は、打てば響くように気持ちよく読み進めることが出来ました。
ブックトーク後、自由に絵本を見ていただいている時の様子は、先ほどまでの時間をストンっと納得させてくれるものでした。3組とも、絵本を挟んでの親子の会話、キャッチボールが、今どきの他のご家庭と比べるとかなり多いのです。「そりゃあ、こんな風に育つよ。」という感じです。そしてこの時間は、子どもたちが次々に「これ読んで」と絵本を持って来るので、なかなか大変な、しかしうれしい時間になりました。
その中でも、一番小さい年長さんの女の子が特に積極的で、一つ一つのことに感想やコメントをくれながら、いい意味でよくおしゃべりしながら聞いてくださっていました。私がお父さんに「実はこの絵本はすでに絶版になっていまして・・・」と、大人の話をしている時のことです。私の斜め後ろにいた女の子から、すぐ、正に間髪入れずに質問が飛び出してきました。
「ゼッパンってどういうこと?」
このお子さんの利発さの理由が分かりますね。毎日こうやって過ごしていらっしゃるのでしょう。お父さんによると、お父さん母さんが子どもの頃からの絵本や児童書が、ご家庭にたくさん並んでいるそうです。(いい本を所有していれば、それは世代を越えて受け継いで行けますね。)
女の子は、絵本もたくさん読んで、大人の会話にもたくさん首を突っ込んで、教科書や塾では教えてくれないたくさんのことに出会っていらっしゃるのだと思います。(まだ年長さん、これから学校なのですが・・・)
・・・毎日をそんな風に過ごしてくれる子どもたち、そういう暮らし環境を整えてあげる大人の人たちに増えて欲しいです。そんなご家庭がたくさんになったら、私たちの絵本展にも、もっとたくさん人が来てくださるはずなのです。
私は30年以上、4~5年ごとにお伺いして、全国各地で絵本を読んで来ました。
その中で、その街全体があまり本を読まなくなると、本を読むように育った子どもたちは、大人になって、やがてその街に残らなくなってしまうことをたくさん見てきました。それがそのまま、街の空気や風景になって行きます。しかし、街全体の取り組みが上手く行くと、そこが少しだけ違ってくる実例にも、いくつか出会っています。
私も愛媛県の片田舎の生まれです。山梨市に限らず、全国の小さな町や村でも、私たちの絵本展のようなイベントが成立する未来を作りたいですね。
さて次回は、3月14日(金)~15日(日)、埼玉県深谷市「深谷駅市民ギャラリー」で開催します。ご予約にはまだかなり空きがあります。お好きな皆さん、是非遊びにきてください。お近くの方には、是非お知らせください。
詳しくは、https://www.gaikokuehon.com