27/09/2024
季刊高知94号のジャイアント・インタビューは東京大学 先端科学技術研究センター准教授、軍事アナリストの小泉悠さん。よく報道番組に出演しています。
高知市の夏季大学講演後に、インタビューさせていただきました。
ちょっとだけ、さわり(ワンブロック)をお読みください。
ロシアの核、西側の忖度。
―ロシア・ウクライナ戦争の行く末がまだ見えないですね。
「被害に遭うのはウクライナで攻撃される市民であり、ロシアの報酬につられて戦場に派遣されている裕福でない若者たちです。戦争は弱者ほど被害を受けます。
アメリカやNATOの国々もウクライナが侵略されて滅んだら困るし、ロシアが核爆弾を使っても困る。その板挟みの中で支援も中途半端になっているんです。
例えば射程300kmの地対地ミサイル「ATACMS」はロシアを刺激するので使わせていないけれど、射程距離が短い80kmの旧式ミサイルは使わせている。西側が忖度して変なところに線を引いていることが、相当あるんじゃないかと感じます。
さすがに戦争も2年半経ち、ずっと続けられない。だからウクライナが負けない程度の支援というものから、ウクライナが主権を保ち有利な停戦をロシアに強要できるような支援への方向転換が必要ではないかと思います」
―アメリカやNATO、あるいは中国などが水面下でプーチンと交渉できないものでしょうか。
「これまで唯一、停戦の交渉ができたのがトルコです。エルドアン大統領は戦争初期に交渉の場を提供して、2022(令和4)年3月のイスタンブールでの停戦交渉では、かなり具体的な話までいったようです。
その後、理由は不明ですが、停戦交渉が止まってしまって、トルコも戦っている両者を同じテーブルにつけることができない。中国は『我々が責任ある仲介者だ』といいながらも、実質的に何もしないわけです。なかなか第三者が止めるのは難しいですね」
―2023(令和5)年に中国が仲介して、サウジアラビアとイランが国交正常化しました。これは世界的なトピックスだと思っていて、香港の民主運動家もメディアも叩き潰した僕は嫌いな国ですが、可能性としてプーチンにモノを言えるのが中国のような気もしています。
「言えるか、言えないかといえば、言えるんでしょうね。でも今、中国には停戦を働きかけるインセンティブ(動機づけ)はないですよ。ヨーロッパが揉めてくれていた方が、アメリカもそれに注視するし、中国からしたらそれが望ましいんです。なおかつロシアの原油は制裁の影響で価格が下がって安く買えるし、この戦争を続けてもらうほうが都合が良い。ただ核を使われるのが怖いので、中国やインドは『核だけは使わないで』と言い続けていて、ロシアへの一定の歯止めにはなっています」
―アメリカはロシアに対して厳しくても、イスラエルに対しては何もしないダブル・スタンダード。それは世界中が見ていると思います。
「象徴的なのは2024年4月のウクライナ支援予算。これは実はイスラエル支援予算とセットなんです。ウクライナに対する侵略は許さん、支援する。これは筋が通っているんですよ。
他方でイスラエルが自衛権の範囲を越えて虐殺している。ロシア軍が占領地域でやっていることをイスラエルもやっているわけで、ハマスもダメだけど、イスラエルもダメだと問わなければいけないのに、片方だけに肩入れするということは、世界の国々がアメリカについていかなくなると誰もが思うんです。
ただ難しいのは、そういうアメリカに日本は安全保障を依存しているから何も言えない。そこが究極的に、大国に安全保障を頼っている理不尽さのひとつなんです」
こんな内容のインタビューが続きます。
どうして小泉さんはロシアの軍事を研究したのか、
日本の安全保障は
高知のことなど、
トータル4ページで語ってくれています。
是非、季刊高知をお読みください。