19/05/2025
【君はイネゴチの味を知っているか?】
マゴチ釣りでは典型的な「外道(ゲドウ)」とされ、低評価されがちな魚である。
この魚を釣り上げたベテラン釣り師は餌釣り、ルアー釣りに関わらず、
「なんだイネかー」
そう落胆し、ときにつまらないものを釣ってしまったというばかりに雑にリリースするが、個人的には新幹線みたいなヘッド形状が好きだ。
そもそも魚釣りにおける「外道」という呼び方自体がなんとも響きが悪く、そろそろ改善していったほうが良いのでは?はじめは異常な言葉づかいに感じる人も少なくないはず。
ということで、かなり前からいわゆる本命以外のゲスト魚に対して「貴殿」という呼び方をつかったり、釣れたら #貴殿でしたか
と、投稿していたが、まーふつーに定着化していない。
そりゃそうである。プロアングラーなどメディアに出る人が「ゲドー」「外道ですね」「外道ですが、」といい続ける限り、まーそのままなのだろう。言葉づかいにこだわる人は「ゲスト」とか言っている。それはそれでよいと思う。
そんなイネゴチはワニゴチと混同されるが、経験上、東京湾ではほぼ全てがイネゴチだと思う。食べたことがない人も多く、よくわからない魚としてリリースされることも多い。
というのも、初心者が釣って先達に聞いても、その人もシッタカの可能性が高く、食べたことがないので微妙な反応をされるからである。
たまにグルメがいて、「ふつーに旨いよ」と教えてくれるのだが、先人から聞く「微妙のバトン」は世代を越えて引き継がれるわけだ。
イネゴチは東京湾で釣れる率は圧倒的にマゴチよりは少なく、時期により繁殖絡みなのか、ボケジャコなどの湧きに連動しているのか、たまに千葉よりでまとまって釣れることがある。
が、だいたいは「たまたま釣れる魚」といってよい。
流通の現場でも未利用魚であり、販売されているのをみたことがあまりない。
以前、ベテラン釣り師が「イネゴチは旨くないヨ」といっていたのを聞いたことがある。
では、イネゴチは本当にまずいのだろうか。
これはしっかり神経締めされた個体であれば旨い。マゴチと遜色ない。水分を多く感じるときもあるが、3枚におろしてから塩を振って絞めればよい。唐揚げにすれば山岡士郎とか栗田も多分気づかない。海原雄山は気づくかも。
先日のマゴチイベントで、トロ箱にこのイネゴチがポツリ残されていて、船長に教えてもらい持ち帰った。
下処理をして、尻から下側の血合い骨が気にならないところを切り取り、刺身にしていく。
同じ皿にマゴチと盛り合わせる。
正体を隠して、刺身好きの6歳と3歳に食べさせると「どっちも旨い」という。
妻に試してもらうと、同じことをいう。
じぶんも改めて試してみる。
そう、大差ない。
もっとも比較しているマゴチは6日前のもので寝かせているから硬さが穏やかになっている。
その硬さと3日目のイネゴチはほぼ同じであったというわけだ。旨味はどうだろうかと、思ったが今回は大差がなかった。
ちなみに6日前のヒラメ(産卵絡みではない個体)はマゴチより柔らかく、食感に敏感な3歳児はヒラメを噛んだあとに吐き出して、マゴチとイネゴチのほうが好きだ、そっちをくれとナマに主張する。
このように、釣り人に「なんだイネかー」と落胆されることの多いイネゴチも、しっかり締めて、処理を適切にして調理すれば、タイミングによりヒラメを超えることもあるし、マゴチと大差ない。
そういうことである。
イネゴチからすると、「なんだイネかー」でリリースされたほうがまー幸せながら、美味しく食べられるということを知っておいたほうが釣り人としては恥ずかしくないだろう。
あなたも次は持ち帰ってみてほしい。