ミルトスは愛と不死、勝利の象徴
地中海沿岸やイスラエルの山地に成育する潅木の中に、ミルトスという小さな木がある。 その花はつねに常緑で、香気を放ち、白い可憐な花を咲かせる。 そのゆえに、古来、人々に愛でられ、ミルトスは愛と不死、勝利の象徴である。
古代ギリシア人は、ミルトスをヴィーナスの聖木とみなし、オリーブと共に冠にした。ユダヤ人もミルトスを好み、モーセは祭りのための大切な植物の一つにこれを選んだ。
また、預言者イザヤは、荒野の中に「茨に代わって糸杉が、おどろに代わってミルトスが生える」(55:13)と言って天の恵みと祝福を予言した。
小社は、現代文明の荒野に楚々たる花をひらき、命の香りを運ぶミルトスでありたいと希う。
さて、何が私たちの命となりえるだろうか。今新たな歴史の転換期に立つ二十世紀の末、目を奪う物質文明の成果にも満足できず、精神の飢えと渇きを訴える者は少なくない。そこで、人々は心の世界の旅人となる。精神界の先人も常にそうだった。
わたしたちは、旅路の途上、イスラエルに出会った。この出会いは未知の共にめぐり合った驚きと感動を与えてくれた。イスラエルは、不死鳥のように甦ったユダヤ民族の国だ。
聖書を人類に贈り、西洋文明にヘブライズムという命を吹き込んだ。彼らの人類への貢献がいかに大きいかは、論を待たない。四千年の文化と伝統が、今新しいパートナーとの出会いを待っている。
アジア大陸の東と西にある日本とイスラエル、今までは遠い国だった。だが、日本の歴史を見ても、異質な文化と文化の交流が、いつも新しい想像を生み出して来たと言えよう。ここにヘブライズムを日本に紹介するという企ての意義を見出す。
皆さんの寛容なご支援あるかぎり、日本の巷にもミルトスの香りがだたようことを信じている。
1985年8月