27/01/2024
本日1月27(日)より、神戸の横尾忠則現代美術館にて開催される『横尾忠則 ワーイ!★Y字路』展。
駄洒落を効かせたお茶目でポップなタイトルは、横尾さんご自身の発案とのことです。
2000年に西脇の岡之山美術館で行われる展覧会『横尾忠則 西脇・記憶の光景展』に向けての新作を故郷に滞在しながら制作していた横尾さん。題材を求めて「夜の西脇」を歩く中で再会したかつて足繁く通ったホビー模型店跡地の三叉路をフィルムで撮影。翌日現像した写真には、見慣れた場所ではない異質な光景が映っていました。
この写真にインスピレーションを与えられた横尾さんは、市内各地の夜の三叉路を集中的に撮影し、そこから絵画を連作しました。横尾さんの数多い作品の中でも指折りの代表作となる「Y字路」シリーズは、こうして世紀の変わり目に、椿坂を起点に原点である故郷・西脇の風景を写真に撮り写実的に描くところからスタートしたのです。
その後「Y字路」作品は多彩な技法を駆使し、より大胆にカラフルに、コラージュによる表現も貧欲に呑み込みながら発展・展開してゆきます。2004年宮崎県立美術館での『横尾忠則 Y字路展』からは公開制作も始まり、プレスリリースの資料には「Y字路と言うモチーフは公開制作と親和性が高い」「中央に配された建物と、左右奥へと伸びる道路から生まれる放射状の線により、構図の安定が担保されることも見逃せない」「土台となる造詣が堅牢なため、即興的に雑多な要素を描き足しても画面は破綻しにくい」などと記されています。
担当学芸員である山本淳夫学芸課長からは、「西洋絵画とは異なり、右の道と左の道とそれぞれの奥に消滅点が2つ存在し、異空間がぶつかって歪みが生じる独特な絵画空間がY字路作品の一つの魅力ではないか。」との解説がありました。展示空間も、シンプルでありながらもYの字から着想を得て15度の角度にずれた壁面が四角い室内に加えられ共存するといった構成が成されています。
誕生から20周年を迎えた2020年に一度は企画されながらコロナ禍の影響で保留となった「Y字路」展。今回満を持しての登場で、Y字路シリーズが始まった最初期の西脇での連作群が一堂に会して並んでいるのも圧巻で、地元の私たちにとっても意義深い展示となっています。
最新のY字路作品と呼べる2019年の3作品はいずれも黒くペインティングされた椿坂のY字路の建物(横尾さんによる立体作品「黒い光 その1」)が中心に描かれています。B29爆撃機が上空に飛来した西脇小学校時代の記憶に紐づく不穏さを漂わせながらも、よく観ると、横尾さん独特のユーモラスな要素も盛り込まれているこちらの「3部作」も必見です。
横尾さんは開催に際し、「私の絵のY字路は、郷里の西脇で思いついたテーマです。西脇は、まるでY字路の宝庫です。われわれの人生は、常に右に行くか、左に行くかの迷いから生じています。まあ、そんなことを念頭において、Y字路展をゆっくり鑑賞してください。」とメッセージ(抜粋)を寄せておられます。
Y字路作品生誕の地としての西脇の風景を、横尾作品を通して見つめ直してみる。そんなアート体験はいかがでしょう?『横尾忠則 ワーイ!★Y字路』展は5月6日(月・振替休日)までの開催となっています。
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