25/03/2024
伊万里の取り追う祭り TORIOU MATSURI
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神之原八幡宮の「取り追う祭り」。この祭りは14世紀の中頃の南北朝時代、足利軍との戦いで負傷した肥後豪族・菊池武重が、大里の地に潜居し、いざという時の為に、人が寝静まった真夜中に人知れず行っていた軍事鍛錬。
藤原氏の末裔である菊池武重は鎌倉時代末期から南北朝時代にかけての武将で、菊池氏の第13代当主であり、ここ伊万里でもその血筋は現在まで脈々と受け継がれている。12月初旬の夜、神殿に集まった若者が敵味方に分かれ、火の粉が舞い煙が立ち上る中、御供さんを奪い合う激しい戦いが繰り広げられる。守り手は、注連縄元(会所)しめなわもと・えいしょと呼ばれる当番制の基地で祭り前の神事・祝宴を執り行う。年によってその場所を変えるのは軍事訓練の為敵に見つからないようにする事が目的とのことである。御供さんはその会所内で作られる。御供さんとはソーケと呼ばれる竹籠に入れた833個の強飯で、菊池軍が亡くした833人の戦死者の数に従っている。その強飯は、833個の魂を意味しているとされ、榊の葉を咥え一言も会話をせず握られる神聖な儀式によって作られる。取りおう祭りの言葉の意味は諸説あるが、村の年配の方に聞いた話だと攻め手が、無くした死者の魂を取り戻し、敵を追い払うという意味が有力との事であった。
松明を背負い会場へ向かう守り手と攻め手。参加者は皆裸足で、真冬の冷たい地面と松明から落ちる炭の上を勇壮に練り歩いてゆく。掛け声の「押しゃえんか」「打ちゃえんか」とは相手を挑発する言葉で、「もっと押す(攻める)事ができないのか」「もっと松明を打ちつけることができないのか」という意味だ。会場に到着する前に神社の脇で参加者は冷水を浴びる。これも軍事鍛錬の一つとされる。攻め手が奪い返した御供さん、その後見物客に振る舞われる。これには「五穀豊穣、無病息災」の意味が込められるという。