象形文字編集室

象形文字編集室 谷内修三の批評 谷内修三が読んだ詩の感想や、映画の感想などを随時アップします。

Obra, Antonio Ignacio González PedrazaSerie: "Ciudades posibles”Tierras, engobes, ceniza y humo.Un edificio de cristal s...
25/12/2023

Obra, Antonio Ignacio González Pedraza
Serie: "Ciudades posibles”
Tierras, engobes, ceniza y humo.

Un edificio de cristal se refleja el otro edificio de cristal. Otro edificio de cristal se refleja el primer edificio. Por eso, el interior del edificio se multiplica. En el interior del edificio se mezclan trabajadores vestidos con camisas blancas. Nadie sabía qué puesto ocupaba su trabajo. Se movió de un lado a otro entre los escritorios, sin saber si algún día llegaría al lugar correcto. Aun así, hizo su trabajo con todo su corazón. Mientras el avión cruzaba el cielo azul, su cuerpo blanco se reflejaba en el cristal. Quería imaginar adónde iba el avión, pero no podía. Una nube blanca se extendió, impidiendo que la imaginación del hombre se expandiera hacia afuera. Mientras tanto, el interior del edificio se llenó con el interior de otros edificios, creando una atmósfera similar a un laberinto. Una persona conocedora declaró: "Este edificio es realmente lo único que existe en este mundo". Y añadió: "Para la imaginación no tiene sentido distinguir si el edificio de cristal en la imagen es real o el edificio en el reflejo es real". Aunque no entendió lo que significaba, el hombre pensó que podía creer las palabras de la conocedora.

ガラスのビルに、向き合ったガラスのビルが映る。そのビルに、またガラスのビルが映る。向き合ったまま、ビルの内部が増殖する。そしてビルの内部では、白いシャツを着て働く男が混じり合う。誰も自分の仕事が、どの位置を占めているのかわからなかった。机の間を行き来するが、正しい場所へたどりつけるかどうか知らなかった。それでも心を込めて、その仕事をした。青空を飛行機が横切ると、その白い機体がガラスに映った。どこへ行くのだろうと、男と想像したかったが、できなかった。白い雲が広がってきて、男の想像力が外へ広がらないようにしてしまった。その間も、ビルの内部には、他のビルの内部が入り込み、迷宮のようになった。ある物知りが、「この世に存在するのは、ほんとうはこのビルだけである」と断言した。「ガラスのビルを映しているビルが本物なのか、映っているビルが本物なのか、想像力の中では区別する意味がないからだ」。意味はわからなかったが、男は、その物知りのことばを信じることができると思った。

27/01/2023

禿げ頭のピカソが  谷内修三

禿げ頭のピカソが
砂浜で絵を描いている
半袖半ズボンから
太った腹と同じ筋肉でできた
太い輝きがはみ出る
太い腕、太い腕で太い棒をつかむ
それは太いペニスになって
世界を獲得する
強靱な円がかさなり
ぎょろりとした目が
精液のように飛び出す
太陽よりもまっすぐに突き刺さる
頭には牛の角が生え
禿げ頭なのに毛むくじゃらだ

荒荒しくえぐられる
砂の奥のきのうの温んだ水
透明に乾いて駆け抜ける
あしたの光
砂はいつまでおぼえているだろうか
どんな色よりも強い線
になったその日
永遠を拒絶する
禿げ頭のピカソを

28/10/2020

破棄された詩のための注釈27
             谷内修三2020年10月28日

 折り畳みのパイプの椅子があり、高窓から光が差し込んでいる。つかわれていなかった部屋のよどみのなかで、その午後の光がうるんでいる。
 欲望についていけなくなった主人公は、「うるみ」ということばに倦怠と希望を託したいのだが、つぎのことばが動かない。

24/10/2020

破棄された詩のための注釈26
             谷内修三2020年10月23日

 風が河口の上を渡り、水のにおいを呼び覚ます。「掠め」か「掃き」か。「顔に吹きつける」か「ぶつける」。
 考えている内に、その間に、水の色は変わってしまう。
 欄干にもたれている脇を犬が通っていく。何を見ない。しかし、犬のあとをついていく男は私を見る。
 「無礼に」「さげすむように」「何かを求めるように」。
 いったい、私は何を探しているのか。

 風が水の上を掃き、水のにおいを吹きつける。

23/10/2020

破棄された詩のための注釈25
             谷内修三2020年10月23日

 花瓶の花を捨てるとき、まだ枯れていない一輪の薔薇を選び、コップに活けた。水の高さを気にして、何度も捨てたり注ぎ直したりした。窓から入ってくる光がつくるテーブルの上の水の影と水の光。そして薔薇の色。
 描きかけの手をとめ、席を立った。捨てた花の中から朽ちた葉っぱだけの一本を追加した。それは「ニュアンス」を定義するためだった。あらゆる存在には共通するものと異質なものがある。その差異を語り直すことが「ニュアンス」を定義することである、という注釈をつけるためである。
 たしかに花びらが生きているように色を変えた。しかし、それは花自身の変化なのか、時間が動いたせいなのか、あるいは意識の錯誤なのか。

12/10/2020

破棄された詩のための注釈24
                        谷内修三2020年10月12日

 未来はすでにできあがっていて、その動かしがたさが、現在を無力にしている。できるのは過去を思い出すことだけだった。

 通り抜けた秘密は、踏みつけたガラスのように割れたまま、壁の絵や窓から見える半壊の雲を映していた。テーブルの上の小さな写真を、空っぽの引き出しの奥に隠した。

 「私はここにいないと言うために、私はここにいる」と忘れていた音楽が歌い始めた。女の、古くて、新しい、擦れた声が。

03/10/2020

破棄された詩のための注釈23
             谷内修三2020年10月03日

 過去が、まだ、残っていた。夏の終わりの光が、壊れた自転車に影をつくっていた。影は板壁に傾いて伸びていた。
 でも、何も私には近づいてこないのだ。そこに、ただ、ある。
 これは現在だろう。未来だろうか。
 彼は話している、彼と。私は話している、私と。ことばは話している、ことばと。

25/09/2020

破棄された詩のための注釈22
             谷内修三2020年09月25日

 絵のなかの、座っていた男が、絵の外へ出て行った。「時間になってしまった」ということばと、椅子が残った。
 椅子は、みんな家へ帰っていく、と絵の外の世界を思った。通りにはすでに街灯がついているだろう。下を通りすぎると、ふいに、影が自分を追い越していくのを目撃してしまう。あの気分だな。座るひとを失った椅子は考えた。
 「何を考えている?」
 絵のなかの、開いた窓が聞いてきた。椅子は考えたことを隠すためのことばを探したがみつからなかった。

17/09/2020

破棄された詩のための注釈21
             谷内修三2020年09月17日

 窓を開けたことのない部屋の匂いがする。時間の匂いだ。動かない時間の、匂い。真昼の光さえ、ガラス窓の縁まで来て、とまどっている。
 この描写は、こう書き直される。
 悔恨がいた。悔恨は、いない。いないことによって、もとのままの姿が見える。本棚を背に、椅子に座って窓の外を見ている。顎を、肘掛けのうえにのせた手で支え、足を中途半端に投げ出している。あのときの姿のままだ。しかし、悔恨は、私の存在には気づかない。窓を閉めきっているようにこころを閉めきっている。

12/09/2020

破棄された詩のための注釈20
             谷内修三2020年09月12日

 彼が、飲みかけのコーヒーを奪うように飲んだとき、ただの白いカップが夏の鮮やかな光を反射し、影が自在に動いた。テーブルの上の積み上げた本にも。そして、開いたノートに書き散らした文字が美しい詩になった。「人間には欠点がある。たとえばふけ頭とか」ということばさえも。
 闖入者の予想もしなかった動きによって、あらゆるものがくつがえされ、新しくなった。見慣れていたものが、初めて見るものとして立ち上がってきた。

 「真実とは、自分のことばで組み立てた考えのことであって、自己のなかにしか存在しない」ということばをどこに挿入すればいいのか。頭が混乱した。

07/09/2020

破棄された詩のための注釈19
             谷内修三2020年09月07日

 ひとつのありふれたコップにすぎないが、価値を与えることができるかもしれないという意識が襲ってきた。価値を意味と言い換え、重みと言い換えてみた。重みは重要性ということばといっしょにやってきた。どちらの方が陰影が大きいか、あるいは暴力的な輝きを持つことができるか。暴力的な輝きとは破壊的な美のことだろうか。新しい名前、いままで存在しなかった比喩のことかもしれない。こうしたことは精神を集中して戦ってみるだけのことがらである。

 もちろん一個のコップのままでもいいのだが、コップ以上のことばが、いつか誰かによって書かれてしまうことを思うと我慢できないのだと言った。「私ではないものの豊かさに欲望し、嫉妬してしまう」とつけくわえた。

06/09/2020

破棄された詩のための注釈18
             谷内修三2020年09月06日
 階段の踊り場で感情が複雑になった。引き返したい気持ちに襲われた。あの部屋で二人は何を見つめているか。しかし、口元まで出かけたことばは欲望を明確にしたがらなかった。手は、手すりの上で動かない。 こんなとき、記憶をどこまで遡らせればいいのか。 呼び鈴がなった。コートを脱ぐのを手伝おうという声に振り向いた。砂糖がたっぷり入った、粘っこいコーヒー。甘さを味わうのか、苦さを味わうのか。集中できない。意識の地下室でキラキラしたものがぶつかりあって、ことばではなく、声が出てしまいそうだ。

02/09/2020

破棄された詩のための注釈17
             谷内修三2020年09月02日

 明け方、木は、木になる前に黒い影としてあらわれる。静かに夜を脱ぎながら、裸の上に幹の色と葉の色をまとい始める。その動きは、いったい何にしたがっているのか。
 「人間ならば、仕事と過去、生活と過去、好みと性格。」
 芝居が終わる寸前になって舞台にあらわれた役者は、逆光のなかで、そのセリフだけを発声する。
 年も、性も、住んでいる街も違う肉体と一本の木をつなぐ、何を見つけてきたのか。その声はただまっすぐに観客の上を渡っていく。

01/09/2020

破棄された詩のための注釈16
             谷内修三2020年09月01日

 聞き慣れた声が、どこか遠くをわたっていく。誰も何も教えてくれなかったのだと気づいたとき、周りにあるものがひとつひとつ消えていくのがわかった。それも体で触れたことがある部分は残したまま、存在の芯がとけていくように消え始めるのだ。椅子の、こんなところにあった肘掛け。机の上にこびついているコーヒーカップの痕。天井のきめこまかい明りさえも。
 「まるで死のように」という比喩がすぐにあらわれたが、書けなかった。あまりに強烈で、ストーリーには思えなかった。主人公が考えたこととは思えなかったのだ。

28/08/2020

破棄された詩のための注釈15
             谷内修三2020年08月28日

 鏡には前に覗いた人の顔が残っている。別の生き方ができたはずなのに、記憶にとらわれてしまった兄は精神科病院に入った。雪が降った。夜になっても止まず、静けさが音になって積もっていった。
 「そんなはずはない」ということばは二度書かれて、二度消された。しかし、消したあとも、断固として残っていた。

27/08/2020

破棄された詩のための注釈14
             谷内修三2020年08月27日

 何も期待することがない、ということばのなかには、まだ「期待」が残されている。
 鏡のように向き合っているビルの窓から、見つめられているのを感じたが、見つめられるままにしているときのように。

25/08/2020

破棄された詩のための注釈13
                         谷内修三2020年08月25日

 いかがわしい俗語を発した瞬間、顔つきが変わった。美しくなった。自覚しているのか、振り返りぎわに視線を流してきた。真昼の光よりも強いものがあった。
 そうなのか。そうかもしれない。

 美は、唐突に現れる抽象ではない。具体に潜む瞬間的な絶対である。ことばにすることは不可能である。

 そうなのか。そうではないかもしれない。

 耳の奥に、遠い山の中を流れる川の音がした。裸で泳いだ、あの夏。巨大な石の上に座って、私は何を振り返ったのだったか。

13/08/2020

破棄された詩のための注釈12
             谷内修三2020年08月13日

 「胃の痛みについては」、別の詩でこう書つづけている。「何も語らなかった。川の流れを見ていた。去っているものを頼りに、痛みを流しているようだった。」
 さらに別の詩では、ことばを複数の人間に分け与えている。
 「頭の中で、全部考えた。感情を動かさないようにするために、川を見に行った。」
 「感情を読みたくない。不謹慎だ。散文だけで充分だ。」
 「痛みは、不道徳だ。」
 しかし、文体の変更はむずかし。反論を重ねてしまうという癖があらわれ、登場人物をひとりに集約させてしまう。

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